2026年2月、世界のジン・スピリッツ業界では興味深い動きが続いています。「スモークドジン」という新カテゴリーの登場、上海発の旧正月限定ジン、香港のクラフトジンシーンの挑戦、そしてマティーニの完全復活――。今月の注目ニュースを、ベルギー・フレムデの蒸留所から生まれたThe Drunken Horse Ginの視点で読み解きます。
「スモークドジン」が新カテゴリーに ― 松煙で燻した正山小種茶ジン
アメリカのState Line Distilleryが2月1日にリリースした「Lapsang Smoked Gin」が話題を呼んでいます。これは中国の伝統的な紅茶「正山小種(ラプサンスーチョン)」を蒸留に取り入れた革新的なジン。松の木で燻された茶葉のスモーキーな香りが、ジュニパーベリーと出会うことで「ジンとウイスキーの架け橋」のような新しい味わいを生み出しているといいます。
業界メディアはこの動きを「スモークドジンがクラフトスピリッツの次のカテゴリーになる」と報じており、既成概念にとらわれない素材選びがジンの世界をさらに広げています。
The Drunken Horse の目線
ジンの可能性を「煙」で拡張する試みは非常に興味深い。The Drunken Horse Ginも、ネパール産ティムットペッパーやコリアンダーシードなど12種のボタニカルの組み合わせで「ジンの枠を超える」複雑さを追求しています。茶葉の燻香でジンとウイスキーの境界を曖昧にするアプローチは、私たちが信じている「クラフトジンの進化は、素材の冒険から始まる」という哲学と通底します。次に試してみたい素材リストが一つ長くなりました。
上海発 Peddlers Gin、「糖葫蘆(タンフールー)ジン」を旧正月に発売
上海生まれのクラフトジンブランドPeddlers Gin Companyが、旧正月(午年)を記念して限定版「Tanghulu Street Candy Gin」を発売しました。糖葫蘆(タンフールー)とは、中国北方の冬の風物詩である屋台菓子で、サンザシや苺を飴でコーティングしたもの。ロンドンドライジンをベースに、サンザシ、広東甘草、苺、ジュニパー、コリアンダーシード、南京トウキ、仏手柑(ブッシュカン)を調合した、いわば「中華版スロージン」です。
価格は中国で約290元(約6,000円)。3月にはロンドンのHutong(ザ・シャード内)やShanghai Me(ヒルトン・パークレーン内)でポップアップイベントも予定されています。
The Drunken Horse の目線
「地元の記憶をジンに封じ込める」という発想に共感します。子供の頃に食べた屋台菓子の味をジンで再現するなんて、最高にロマンティック。The Drunken Horse Ginの生まれ故郷であるベルギー・フレムデにも、地元の記憶と結びついたボタニカルがあります。世界中のクラフトジンが「その土地のストーリー」を語り始めている――これは2026年のジンシーン全体の大きな潮流です。
香港クラフトジンの挑戦 ― 世界的な消費減の中で生き残る4つの蒸留所
The Drinks Business誌が2月に特集した「Making the Case for Hong Kong Gin」によれば、世界的にジン消費がやや低迷する中でも、香港では4つの蒸留所が積極的にジンを造り続けています。
N.I.P(無名氏)
2020年創業、香港初の完全地元蒸留ジン。2026年で6周年を迎え、アジアのクラフトジンシーンの牽引役。
Two Moons Distillery
見学も可能な香港初のビジター対応蒸留所。カラマンシージンなどアジア素材を活用したラインナップが特徴。
Hanabi Gin
Nelson Siu氏が2021年に立ち上げ。N.I.Pやカリフォルニアの蒸留所と協力して少量生産。
Chill Gin
酒類商HK Liquor Storeの共同創業者が2024年にデビュー。フローラル系2種で香港、マカオ、シンガポール、EUに展開。
ただし課題も大きく、約2,600平方フィートの蒸留所で月額家賃は数十万円規模。香港の高い賃料と闘いながらクラフトジンを造り続ける姿勢には、世界中のマイクロ蒸留所が共感するはずです。
The Drunken Horse の目線
小さな蒸留所が高コストと闘いながら品質に妥協しない――これはまさに私たちGentlemen's Craftの日常でもあります。フレムデの蒸留所も決して大きくはありませんが、Copper Foam Digital Stillという独自の蒸留器で一滴一滴にこだわっています。香港の仲間たちにエールを送りつつ、いつかアジアのジンフェスティバルで一緒にグラスを傾けたいものです。
マティーニが世界トップ10入り ― 2026年のカクテルトレンド
ここ数年にわたる「マティーニ・ルネサンス」がついに結実し、2026年、クラシック・マティーニが世界のカクテルランキングでトップ10入りを果たしました。ジンベースのカクテルが復権する流れは、クラフトジン愛好家にとって追い風です。
マティーニ・ルネサンス
数年越しの復活劇が完了。シンプルな2〜3素材のカクテルだからこそ、ベースとなるジンの品質が問われる時代に。
ネグローニのバリエーション爆発
ホワイト・ネグローニ(ジン+スーズ+リレ・ブラン)がメニューに定着。樽熟成やフルーツ漬けカンパリなど、バーテンダーたちの実験が止まらない。
ジントニックのクラフト化
バーで提供されるジントニックが、ハーブ・ボタニカル・エキゾチックな柑橘による豪華なガーニッシュとともに進化。地元産・旬の素材を使うローカルツイストが2026年のキーワード。
The Drunken Horse の目線
マティーニの復活は、ジンの「素の実力」が試される時代の到来を意味します。ヴェルモットとジンだけで成立する世界では、ごまかしが効きません。The Drunken Horse Ginのティムットペッパー由来のグレープフルーツのような華やかなアロマとジュニパーの芯の強さは、マティーニでこそ真価を発揮すると自負しています。ぜひ辛口のドライヴェルモットとともにお試しください。
数字で見る2026年のスピリッツ業界
+5.2%
ジン市場の価値成長率(2026年予測)
※ウルトラプレミアム帯が牽引
760億ドル
RTD(缶カクテル)市場の2035年予測
※2025年の351億ドルから116%成長
54%
米国の飲酒率(2025年)
※2022年の67%から大幅減少
飲酒率の低下とRTD市場の急拡大、そしてウルトラプレミアム帯への集中――。一見矛盾するこれらの数字は、消費者が「飲む量は減らし、飲む時はいいものを」という志向にシフトしていることを示しています。Z世代を中心に「意識的な飲酒(Mindful Drinking)」が広がり、量より質を求める層が増加しています。
The Drunken Horse の目線
「少なく、良いものを」――この潮流は、私たちのようなマイクロ蒸留所にとって最高の追い風です。大量生産ではなく、12種のボタニカルを丁寧に蒸留する小さなバッチだからこそ届けられる味があります。一杯のジントニックをゆっくりと味わう時間の価値が、世界中で再発見されています。
その他の注目トピック
Gunpowder Irish Gin × イタリアの世界王者バーテンダー
アイルランドのShed Distilleryが、世界大会2度優勝のバーテンダーBruno Vanzanとコラボ。イタリアのヴィオラ無花果とトスカーナ産ジュニパーを加えた「Gunpowder Irish Gin with Italian Fig & Laurel」を発売。9カ国から集めた12種のボタニカルを使う姿勢が話題に。
Absolut × Tabasco チリペッパーウォッカ
1月28日、AbsolutとTabascoがコラボしたチリペッパー風味のウォッカが世界展開を開始。スピリッツ業界の異業種コラボレーションが加速しています。
エルトン・ジョン、ノンアルスパークリングワインに参入
音楽界のレジェンド、エルトン・ジョンが自身の名を冠したノンアルコール・スパークリングワイン「Elton John Zero Blanc de Blancs」をドイツで製造・発売。シャルドネ100%で造られた本格派で、ソバーキュリアス市場の拡大を象徴する一本。
2026年2月のまとめ ― ジンの世界は「物語」の時代へ
スモークドジン、糖葫蘆ジン、香港ジン、マティーニ復活――今月のニュースに共通するのは、「ジンは単なる蒸留酒ではなく、土地・文化・記憶の物語を伝えるメディアである」という潮流です。
中国の屋台菓子を閉じ込めたジン、松煙茶の香りを纏うジン、香港の小さな蒸留所から世界に挑むジン。そしてベルギー・フレムデの3人の幼なじみが造るThe Drunken Horse Ginもまた、ネパールの山岳地帯からベルギーの蒸留所まで、ボタニカルの旅の物語を一瓶に込めています。
次にグラスを傾けるとき、そこに詰まった物語に想いを馳せてみてください。
ベルギー発、物語のあるクラフトジン
サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトで金メダルを獲得した
The Drunken Horse Gin を日本公式サイトからお求めいただけます。
出典・参考:
- BevNET — Smoked Gin Emerges as Craft Spirits' Next Category
- The Spirits Business — Peddlers Gin Rings in the Year of the Horse
- The Drinks Business — Making the Case for Hong Kong Gin
- SevenFifty Daily — 6 Spirits Industry and Cocktail Trends to Watch in 2026
- Park Street — Top Beverage Alcohol Industry News Stories in 2026
- The Spirits Business — World Spirits Report 2025: Gin
※ 20歳未満の方への酒類の販売は法律で禁じられています。