定番のジントニックに、もう一手だけ加えるとしたら何がいいか――。ライムやキュウリは試した、ローズマリーやピンクペッパーも置いてある、という方にこそ知ってほしいのが ティムットペッパー (Timur Pepper) という選択です。ヒマラヤの斜面で採れる「胡椒」と呼ばれている実で、噛むと辛いというよりグレープフルーツのような柑橘の香りがふわっと立ちます。The Drunken Horse Gin は、ボトルの中にすでに 12 種のボタニカルの一つとしてこのティムットペッパーを忍ばせています。だからこそ、グラスの上にもう一粒浮かべると、香りが「重なって」立体になる。
ティムットペッパーとは何か ― ヒマラヤ斜面の「柑橘の胡椒」
ティムットペッパーは、ネパールの中山間部 (主にバグルング県・ミャグディ県周辺) で採れる Zanthoxylum 属の実です。植物学的には中国の四川料理でおなじみの花椒(ホアジャオ/Sichuan pepper)の親戚にあたります。同じ属でありながら産地と気候が違うため、四川産が「痺れ」と「青みのあるスパイシーさ」を前面に出すのに対し、ヒマラヤのティムットはグレープフルーツやパッションフルーツのような明るい柑橘香が圧倒的に前に出ます。
「胡椒」と訳されることが多いですが、いわゆるブラックペッパー (Piper nigrum) とは別の植物。香りの正体は柑橘で、舌に残るのは穏やかな清涼感としびれ。スパイスというより、香水のような揮発性の高い香り素材と捉えると使いどころが見えてきます。
ティムット / 花椒 / ブラックペッパーの違い
| ティムット | 花椒 | ブラックペッパー | |
|---|---|---|---|
| 産地 | ネパール / ヒマラヤ | 中国・四川 | インド・東南アジア |
| 植物 | Zanthoxylum 属 | Zanthoxylum 属 | Piper 属 (別系統) |
| 香りの主軸 | グレープフルーツ・柑橘 | 青いハーブ感 | スパイシー・木質系 |
| 口当たり | 穏やかな清涼感+微しびれ | 強いしびれ | 辛味 |
なぜ「ジントニック × 胡椒」が成立するのか
ジンの主役であるジュニパーベリーは、もともと松脂のような樹脂感とシトラスのトップノートを併せ持ちます。トニックウォーターのキニーネは苦味でこの柑橘感を持ち上げ、ライムが上から華やかさを足す。この三角形の中で、ティムットペッパーは「柑橘の延長線上にある、もうワンレイヤー」として自然に収まります。
黒胡椒だと辛味と木質感が強く、ジントニックの軽やかさを潰しがち。一方ティムットは香りが先に立ち、辛味は最後にほんの少し舌に残るだけ。「香りの厚みは増えるのに、軽さは失われない」――これが、海外のクラフトカクテルシーンでティムット採用が増えている理由です。Ginopedia (英 The Gin Guild) でもティムットは「2010 年代後半からジン業界で注目されはじめたボタニカル」として整理されています。
The Drunken Horse の目線
The Drunken Horse Gin は、ベルギー・アントワープ近郊フレムデ(Vremde)の Gentlemen's Craft 蒸留所が、独自設計の蒸留器で 12 種のボタニカルを同時に蒸留しているクラフトジンです。その 12 種の中にティムットペッパーがすでに 1 つ入っている。だからこそ、私たちはあえて「ボトルにも入っている素材を、グラスの上にもう一粒置く」というレシピを推しています。ボトルの中で他のボタニカルと馴染んだ香りが、グラスの上から新鮮なまま落ちてくる粒の香りで一度引き戻される。これは別のジン+ティムットでは出ない、TDH ならではの「層の重ね方」です。
自宅で作る「ティムットペッパー・ジントニック」
材料 (1杯)
- The Drunken Horse Gin: 30〜40ml
- トニックウォーター (フィーバーツリー、ハーティーズなどドライ系): 120〜150ml
- ティムットペッパー (粒): 2〜3粒
- ライム or グレープフルーツの皮: 1〜2枚
- 氷: たっぷり
STEP 1 ― 粒を「軽く」つぶす
グラスにティムットペッパーを 2〜3 粒入れ、マドラーや小さなスプーンの背で軽く押して香りを起こします。粉々にする必要はなく、ヒビが入る程度で十分。ここで強く潰しすぎるとしびれが前に出てしまいます。
STEP 2 ― 氷とジンを注ぐ
氷をたっぷり入れて、TDH ジンを 30〜40ml 注ぎます。粒は底に沈めたまま、軽くステアして香りを冷たいスピリッツに移します。
STEP 3 ― トニックを縦に落とす
トニックウォーターは氷の側面に沿って静かに、なるべく炭酸を残すように。比率は 1:3〜1:4 のドライ寄りがティムットの柑橘香と最も相性が良いです。
STEP 4 ― 皮で香りを「閉じる」
ライムまたはグレープフルーツの皮を、ピールするように軽くひねってグラスの上で 1 度だけ振り、最後にそっと沈めます。ライムなら緑のシャープさ、グレープフルーツならティムットと同じ系統で香りを増幅。お好みで。
定番を壊さずに、もう一層
ティムットペッパーを浮かべるジントニックは、奇をてらった「変わり種」ではなく、ジンというお酒が本来持っている柑橘の骨格を素直に伸ばすアプローチです。粒を 2〜3 つ、軽く割って沈めるだけ。それだけで一杯が立体的になり、二杯目に頼みたくなる「香りの厚み」が生まれます。
The Drunken Horse Gin は、ベルギーの蒸留家が世界中のボタニカルから選びとった 12 種で構成されています。その中のティムットを主役にした飲み方は、いわばこのジンが内側に持っている物語を、グラスの上で続きから語るような体験です。
ボトルにもティムットが入っている、ベルギー発クラフトジン
サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトで金メダルを獲得した
The Drunken Horse Gin を日本公式サイトからお求めいただけます。
よくある質問
Q. ティムットペッパーって辛いんですか?
A. いわゆる黒胡椒のような辛味は弱く、噛むと最後にほんの少ししびれが残る程度です。香りはむしろグレープフルーツのような柑橘で、「辛い」より「明るい」と表現するほうが近いです。
Q. 粒は飲み込んでも大丈夫ですか?
A. 食用スパイスなので問題ありません。ただし噛むと舌にしびれが広がるので、グラスの底に沈めたままにするか、飲み終わりに気になれば取り除く形が一般的です。
Q. ティムットが手に入らない時は何で代用できますか?
A. 完全な代用は難しいですが、香りの方向性が近いのはピンクペッパー (ブラジリアンペッパー)。しびれと柑橘香の両方を求める場合は花椒を 1 粒だけ加えると近い印象になります。
Q. ジントニック以外にも合いますか?
A. ネグローニ、ホワイトレディ、ジン・サワーなど柑橘要素のあるカクテルと相性がよいです。グラスの上に粒で 1〜2 粒だけ浮かべるところから試してみてください。
参考
- The Gin Guild, Ginopedia: Timut peppers (theginguild.com)
- Timut Pepper Nepal — Introduction (timutpeppernepal.com)
- SBS Food, "What is timut pepper" (sbs.com.au)
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