「同じレシピでも、蒸留方式が違えば別の味になる」 ― これは300年のジン蒸留史が積み上げてきた知見だ。The Drunken Horse Gin が Gentlemen's Craft 蒸留所で採用する蒸留器は、ロンドンの Portobello Road で創業者たちが出会った オランダ人エンジニアが設計した、21世紀型の 独自設計の still。kettle のコラムに 1,000を超える springs を備え、constant reflux(連続的還流)で滑らかな仕上がりを生む。本記事では、ジン蒸留の3方式を整理した上で、Gentlemen's Craft の蒸留方式が何を実現しているのかを解きほぐす。
ジン蒸留の3方式
ジンの蒸留器には、大きく分けて3つのタイプがある。
- ポットスチル(単式蒸留器): 17世紀から続く伝統方式。銅製、バッチ式。香りの個性が立つが、生産効率は低い。多くのクラフトジンが採用
- 連続式蒸留(コラム / コフィースチル): 19世紀発明、連続運転で大量生産。クリーンな中性スピリッツが得意。Tanqueray など大手で活用
- 真空蒸留(バキュームスチル): 21世紀、低温・低圧で蒸留。繊細なボタニカル(生のハーブ、フレッシュ柑橘)の香りを保てる
それぞれに哲学があり、ジン銘柄ごとに 「どの方式を選ぶか」が味の方向を決める。Gentlemen's Craft の蒸留器は、これらの基本タイプを踏まえた上で 独自のリフラックス機構を組み込んでいる。
なぜ「銅」なのか ― 化学的な必然
ジン蒸留器の構造で、まず重要なのが 銅。これは伝統だけの話ではなく、科学的に明確な役割がある。
銅の3つの役割
- 硫黄化合物の除去: 発酵過程で生まれる卵腐臭のような硫黄成分(DMS、メルカプタン)が銅表面で吸着・酸化される
- 口当たりの滑らかさ: 銅イオンが脂肪酸やアルデヒド類と反応し、刺激臭を和らげる
- 触媒効果: 蒸留中の様々な化学反応を促進し、ジンの味を「整える」
同じレシピでもステンレス蒸留器で作ると、明らかに 硫黄っぽい雑味が残る。19世紀以前から、職人たちは経験的にこのことを知っていた。現代の科学はその直感を裏付けた。
Gentlemen's Craft 蒸留器の特徴 ― 1,000を超える springs と connstant reflux
Gentlemen's Craft 蒸留所の蒸留器の最大の特徴は、"kettle"(ケトル)のコラム内部に組み込まれた 1,000を超える springs(バネ状の構造)だ。
仕組み
- kettle で原料を加熱: ボタニカルとともに中性スピリッツを蒸留タンクに入れて温める
- 蒸気がコラムを上昇: そのコラム内部に1,000を超える springs が組み込まれている
- springs が constant reflux を起こす: 蒸気は springs に当たって繰り返し冷却・再蒸発する(リフラックス=還流)
- 結果として「smooth and round」な仕上がり: 雑味が分離され、ボタニカルの香りが層になって残る
これは、伝統的なポットスチルが持つ 「銅との接触による精製」を、現代の精密な工学設計で 最大化するアプローチ。「200年前の技術をいまだに使い続けている業界」への、オランダ人エンジニアの一つの答えとして設計された。
12種のボタニカルを「同時蒸留」する設計
Gentlemen's Craft の蒸留方式のもう一つの特徴が、12種すべてのボタニカルを同時に蒸留すること("All 12 botanicals are distilled at the same time")。
一部のジン蒸留所は、ボタニカルを 個別に蒸留してからブレンドする手法を取る(コンポーネント・メソッド)。これに対して Gentlemen's Craft は 全部を1つの kettle に入れて同時に蒸留する古典派の手法。1,000を超える springs の constant reflux と組み合わせることで、12のボタニカルが分離せず、口の中で順番に立ち上がる3つの flavour wavesが生まれる ― これが TDH の独特の構造を支えている。
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技術と味のつながり ― 3つの flavour waves
1,000を超える springs と constant reflux が生む「smooth and round」な仕上がりは、TDH の 3つの flavour wavesとして表現される。
蒸留の精密さが生む 3 flavour waves
- 第1波(シトラス): ピンクグレープフルーツ、ライム、レモングラスの新鮮な皮の香り ― リフラックスでクリーンに精製され、トップノートが立つ
- 第2波(アーシー): カルダモンとコリアンダーが、舌の中央に柔らかな広がりをもたらす ― 同時蒸留だからこそ各要素が分離せず溶け合う
- 第3波(スパイシー): 3種の胡椒、特にネパール・ヒマラヤ産 Timut pepperが、第1波の柑橘を再び呼び戻す形で余韻を作る
この3波が 分離せず連続的に立ち上がるのが、Gentlemen's Craft の蒸留方式がもたらす特徴。マティーニやジントニックで、TDH の味の立体感がはっきり感じられる理由でもある。
国際品評会での評価
この蒸留方式が支える品質は、世界3大陸の主要なスピリッツ品評会で評価されてきた。サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトの3つの品評会に送られたボトルは、複数の Gold および Double Gold メダルを獲得。2018年の San Francisco World Spirits Competition では gold medal を受賞している。蒸留所の規模感に比して、技術的な完成度の評価が高い ― これが Gentlemen's Craft の国際的な立ち位置だ。
蒸留方式でジンを選ぶ ― 一つの視点
消費者がジンを選ぶ時、産地・ボタニカル・価格に加えて 蒸留方式を1つの軸にすると、選び方が一段深くなる。
- ポットスチル単独: 伝統派、ロンドンドライ系(Beefeater, Tanqueray, Sipsmith)
- 真空蒸留: 繊細・フレッシュ系(Sacred Spirits ほか)
- ポット + 連続式の組み合わせ: 大手規模のクラフト(Hendrick's など)
- 独自設計の現代型 still: 蒸留所の哲学が反映(Monkey 47, The Drunken Horse / Gentlemen's Craft, Sipsmith Prudence など)
まとめ ― 蒸留器は、味の哲学
クラフトジンの世界で、蒸留器は単なる装置ではなく、蒸留所の哲学そのものだ。Gentlemen's Craft の蒸留器は、ロンドン Portobello Road で出会った オランダ人エンジニアが「200年前の技術への問題提起」として設計した、21世紀型の独自設計。1,000を超える springsが生む constant reflux と、12のボタニカルの同時蒸留が、TDH の「smooth and round」を支えている。
The Drunken Horse Gin の一杯の中に、kettle のコラムを駆け上がる蒸気と、springs に当たっては還る液滴と、12種のボタニカルの順番に立ち上がる香りが同居している。一杯を注ぐ時、その背後にある蒸留器のことを少しだけ思い浮かべると、ジンの世界が一段深くなる。
ベルギー発、物語のあるクラフトジン
サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトで金メダルを獲得した
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よくある質問
Q. なぜジンは銅製の蒸留器で作るの?
A. 銅は蒸留中の硫黄化合物(卵腐臭の原因)を吸着・酸化し、ジンの口当たりを滑らかにします。さらに脂肪酸やアルデヒドの刺激臭を和らげる触媒効果も持ちます。ステンレスでは出せない味の透明感の源です。
Q. Gentlemen's Craft 蒸留所の蒸留器は何が特別?
A. ロンドンPortobello Roadで創業者たちが出会ったオランダ人エンジニアが設計した、21世紀型の独自設計の still です。kettleのコラム内に1,000を超えるspringsが組み込まれ、constant reflux(連続的還流)で滑らかな仕上がりを実現します。
Q. 同時蒸留と個別蒸留、何が違う?
A. 同時蒸留は12種のボタニカルを1つの kettle に入れて一緒に蒸留する古典派の手法。個別蒸留(コンポーネント・メソッド)は各ボタニカルを別々に蒸留してブレンドする。TDH は同時蒸留で、constant reflux と組み合わせることで12種が層になる立体感を作っています。
Q. 蒸留方式でジンを選ぶ判断は可能?
A. はい。ポットスチル単独は伝統派ロンドンドライ系、真空蒸留は繊細・フレッシュ系、独自設計の現代型 still は蒸留所の哲学反映型。同じレシピでも蒸留方式が違えば別の味になるので、銘柄選びの軸として有効です。
Q. TDHが国際品評会で評価された技術的理由は?
A. 1,000を超えるspringsによるconstant refluxで雑味が精製されること、12種ボタニカルの同時蒸留で各要素が層になる立体感が生まれること、そして銅が硫黄化合物を除去する触媒効果が組み合わさり、サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトの品評会で複数の Gold および Double Gold メダルを獲得しています。
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※ お酒は20歳になってから。妊娠中・授乳期の飲酒は避けてください。飲酒運転は法律で禁止されています。
出典: Drunken Horse Gin Distillery / The history of The Drunken Horse Gin (Luxuria Lifestyle)