「ジンください」と頼んだら、バーテンダーから「どの種類で?」と聞き返された経験はないだろうか。ジンには、見た目はどれも透明な液体に見えて 明確に異なる5つの主要スタイルがある。それぞれに歴史的な必然があり、合う飲み方も違う。本記事では、ジンの5つの型 ― ロンドンドライ・プリマス・オールドトム・コンテンポラリー・ジュネヴァ ― を順に解きほぐす。
5つのスタイル ― 全体地図
時系列で並べると
- ジュネヴァ(Genever) ― 17世紀ベルギー・オランダ生まれ、ジンの祖先
- オールドトム(Old Tom) ― 18〜19世紀英国の甘口ジン
- ロンドンドライ(London Dry) ― 19世紀後半に確立した辛口ジンの基準
- プリマス(Plymouth) ― 19世紀以降、英国プリマス市の地理的呼称
- コンテンポラリー(Contemporary / New Western) ― 21世紀のクラフトジンの主流
この5つを順に見ていけば、現代のジン市場の風景がほぼ全て理解できる。
1. ジュネヴァ(Genever)― ジンの祖先
- 発祥: 17世紀のベルギー・オランダ
- 製法: 麦芽ベースの蒸留酒に、ジュニパーで香りを付ける
- 味の傾向: ウィスキー寄り、麦の甘味、樽熟成あり
- 代表銘柄: Bols Genever、Filliers、Rutte
- 飲み方: ストレート、または「コペストイトテ(Kopstootje)」と呼ばれる伝統スタイル
ジュネヴァはオランダ語で 「ジュニパー(薬草)」を意味し、17世紀にオランダの医師が薬として作ったのが起源とされる。18世紀にイギリスへ渡り「ジン」と短縮されて爆発的に流行したが、現代のロンドンドライとは 味の方向が全く別物。麦の甘味が前に出るウィスキー寄りの飲み物だ。
ベルギー・フレムデを含むベルギー圏では、今もジュネヴァが伝統酒として作られ続けている。The Drunken Horse が拠点を置くベルギーは、ジンの「故郷」と言える地域なのだ。
2. オールドトム(Old Tom)― 18〜19世紀の甘口
- 発祥: 18世紀の英国(ロンドン)
- 製法: ジンに砂糖を加えた甘口バージョン
- 味の傾向: 甘く丸い、ロンドンドライとジュネヴァの中間
- 代表銘柄: Hayman's Old Tom、Ransom Old Tom
- 飲み方: トム・コリンズ、マルティネスなどクラシックカクテル
当時の蒸留技術が荒くて雑味の多いジンを 砂糖で飲みやすくした のが起源。「Old Tom」という名前の由来は、店先に置かれた木製の 猫の看板(Tom Cat)にコインを入れるとジンが出てくる装置があった、という説が有力(密造酒時代の仕組み)。
20世紀には一度ほぼ消滅したが、クラシックカクテルブームと共に2000年代に復刻。マルティネスやトム・コリンズなど、19世紀のレシピを正確に再現したいバーで再評価されている。
3. ロンドンドライ(London Dry)― 辛口の基準
- 発祥: 19世紀後半の英国(コフィー式連続蒸留器の普及以降)
- 製法: 中性スピリッツを再蒸留し、蒸留時に 天然ボタニカルのみで香り付け。蒸留後の添加物は基本なし(少量の水のみ)
- 味の傾向: ジュニパー骨格、辛口、シャープ
- 代表銘柄: Beefeater、Tanqueray、Gordon's、Sipsmith
- 飲み方: ジントニック、マティーニ、ネグローニなど全方位
「ジンと言えばこれ」と多くの人が思い浮かべるスタイル。EU/英国の法的定義もあり、蒸留後の添加物が制限される。「London Dry」は地理的呼称ではなく、製法スタイルを示す ― 世界中どこで作っても、この製法を守れば名乗ることができる。
1830年代のコフィー式連続蒸留器の発明により、雑味の少ないクリーンな中性スピリッツが量産できるようになり、砂糖で誤魔化す必要がなくなったのがロンドンドライ誕生の背景。19世紀のテクノロジーが生んだスタイルだ。
4. プリマス(Plymouth Gin)― 地理的指定
- 発祥: 1793年、英国プリマス市の Black Friars 蒸留所
- 製法: ロンドンドライに近いが、プリマス市の 特定の蒸留所でのみ生産可能(地理的呼称)
- 味の傾向: ロンドンドライよりやや甘く、まろやか、土の香り
- 代表銘柄: Plymouth Gin
- 飲み方: ジントニック、ピンク・ジン(ビターズ)
厳密にはスタイルというより 地理的呼称。フランスのシャンパーニュやスコッチウィスキーと同じく、特定地域でのみ「プリマス」を名乗れる。英国海軍の公式ジンとして19世紀に栄えた歴史を持つ。
5. コンテンポラリー(Contemporary / New Western)― 21世紀の主流
- 発祥: 1990〜2000年代の米国・英国・北欧
- 製法: ロンドンドライの基本(ジュニパー必須)を守りつつ、他のボタニカルが主役級に立つ
- 味の傾向: 柑橘・フローラル・スパイス・ハーブが多彩、ジュニパーの存在感は控えめ
- 代表銘柄: Hendrick's(バラ、キュウリ)、Aviation(オレンジ、カルダモン)、Monkey 47(47種)、季の美(和素材)、The Drunken Horse(ティムット他12種)
- 飲み方: スペイン式ジントニカ、香り重視のマティーニ、ハーブやスパイスを使ったモダンカクテル
厳密な定義はないが、「ロンドンドライの法的定義は満たすが、ジュニパー以外のボタニカルが主役」な銘柄が広くこう呼ばれる。今のクラフトジンの大半はこのスタイル。クラフトジン・ブームが生んだ新しい型と言ってよい。
本記事で触れている The Drunken Horse Gin は、 日本公式オンラインショップ から購入可能です。
The Drunken Horse の目線 ― 二重の系譜
The Drunken Horse Gin の面白さは、5つのスタイルの中で 明確にどれか一つに収まらないところにある。生産地は ジュネヴァの発祥地ベルギー。製法はロンドンドライの定義を満たす(蒸留時の天然ボタニカルのみで香り付け)。設計思想は完全に コンテンポラリー(12種のボタニカルで複層的な香りを作る)。
ジュネヴァの故郷で、ロンドンドライの作法を守り、コンテンポラリーの自由を取り入れる ― この 「ベルギーの伝統 × 英国の規律 × 現代の自由」 という三重構造が、TDH の味の厚みを支えている。
サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトでの金メダルは、この設計が国際的に評価された証でもある。
自分に合うスタイルの探し方
- 「ジンらしいジン」が好き → ロンドンドライ(Beefeater, Tanqueray, Sipsmith)
- 柑橘・フローラル系が好き → コンテンポラリー(Hendrick's, The Botanist)
- スパイスや独自素材が好き → コンテンポラリー(The Drunken Horse, Monkey 47, 季の美)
- ウィスキー好きで甘口に興味 → ジュネヴァ(Bols Genever)
- クラシックカクテルを正確に再現したい → オールドトム(Hayman's Old Tom)
まとめ ― 5つの型で、ジンの世界が見える
ジンの「種類」は、見えにくいけれど確かに存在する。ジュネヴァ → オールドトム → ロンドンドライ → プリマス → コンテンポラリー という流れは、400年のジン史そのものだ。家にある1本がどのスタイルかを知るだけで、合う飲み方とカクテルが見えてくる。
次の1本を選ぶときは、今持っているのとは違うスタイルを試してほしい。ロンドンドライ派ならコンテンポラリーへ、コンテンポラリー派ならジュネヴァへ。同じ「ジン」という名前の中に、これだけ違う世界がある。
ベルギー発、物語のあるクラフトジン
サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトで金メダルを獲得した
The Drunken Horse Gin を日本公式サイトからお求めいただけます。
よくある質問
Q. ロンドンドライジンって何ですか?
A. 19世紀後半に確立した辛口ジンの製法スタイル。蒸留時に天然ボタニカルのみで香りを付け、蒸留後の添加物を制限したもの。地理的指定ではなく、世界中どこで作ってもこの製法を守れば名乗れます。
Q. ジュネヴァとジンの違いは?
A. ジュネヴァは17世紀ベルギー・オランダ発祥のジンの祖先。麦芽ベースで樽熟成もあり、味はウィスキー寄り。現代のロンドンドライジンはクリーンな中性スピリッツがベースで、味の方向が全く別物です。
Q. コンテンポラリージンとは?
A. 21世紀のクラフトジンブームが生んだ新しい型。ロンドンドライの定義は満たすが、ジュニパー以外のボタニカル(柑橘、ハーブ、スパイス、和素材など)が主役級に立つ設計を指します。
Q. オールドトムジンは今でも作られていますか?
A. はい。20世紀には一度ほぼ消滅しましたが、2000年代のクラシックカクテルブームと共に復刻し、現在はHayman'sやRansomなどが製造しています。マルティネスやトム・コリンズの正確な再現に使われます。
Q. 自分に合うジンのスタイルはどう選ぶ?
A. 「ジンらしい辛口」ならロンドンドライ、「香りで遊びたい」ならコンテンポラリー、「ウィスキー寄りの甘口」ならジュネヴァ、「クラシックレシピ通り」ならオールドトム。今ある1本と違う方向を1本買い足すと、ジンの世界が一気に広がります。
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※ お酒は20歳になってから。妊娠中・授乳期の飲酒は避けてください。飲酒運転は法律で禁止されています。