「クラフトジン」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはイギリス、あるいは日本。けれど近年、業界の目線が静かに ベルギーに注がれている。本記事では、ジン(ジュネヴァ)発祥の地ベルギーが、なぜ今 21世紀のクラフトジン地図で 第4の柱として注目されているのか、その潮流を整理する。
ベルギー = ジンの故郷
まず歴史的事実から確認しておく。ジンの祖先は、ベルギー・オランダで生まれた。
17世紀、ベルギーとオランダの医師たちが、麦芽蒸留酒に ジュニパー(薬草)を浸けて、利尿剤・解熱剤として処方した。これが ジュネヴァ(Genever)。「ジュニパー」を意味するオランダ語が由来になっている。
18世紀にこれがイギリスに渡って 「Gin」と短縮され、ロンドンで爆発的に普及した。今我々が飲んでいる「ジン」は、ベルギー・オランダで生まれた飲み物が、海を渡って進化したものだ。
つまりベルギーは ジンの故郷。それなのに、20世紀のロンドンドライ・ジンの大躍進と、ベルギーの伝統ジュネヴァの主役交代によって、世界のジン業界での存在感はやや低下していた。それが 21世紀のクラフトジン時代に大きく変わった。
21世紀のベルギークラフトジン ― 3つの傾向
現代のベルギークラフトジン業界には、はっきりと 3つの傾向がある。
傾向1:伝統ジュネヴァの復興派
- Filliers: 1880年創業、ベルギー最古級の蒸留所。ジュネヴァとモダンジンの両方を生産
- Rutte: 17世紀から続く蒸留家系、ジュネヴァ復興とジンの並列展開
- Bols Genever(オランダ): 厳密にはベルギー外だが、ジュネヴァ文化圏として常に並列
傾向2:現代解釈派(コンテンポラリージン)
- The Drunken Horse Gin: Gentlemen's Craft 蒸留所、12種のボタニカル + ヒマラヤ産ティムットペッパー
- Wilderen Gin: 麦芽スピリッツを残しつつ現代のクラフトジン技法
- Buss N°509: 多種ボタニカル路線
- Saint Amans: フローラル系
傾向3:実験派・限定派
- ベルギー国内の小規模蒸留所による 地域限定ボタニカルの実験
- 樽熟成ジン、ホップ・ベルギービール酵母を取り入れたハイブリッド
- 毎年異なるレシピを発表する季節限定ブランド
ベルギークラフトジンが面白い4つの理由
- 蒸留技術の蓄積: 17世紀から続くジュネヴァ伝統で、銅蒸留・ボタニカル抽出の技術が脈々と継承されている
- 独立系の多さ: 大手の傘下に入っていない独立蒸留所が多く、レシピの自由度が高い
- 地理的多様性: フランドル / ワロン / ブリュッセルの3地域で素材も文化も異なる
- EU認証への近さ: ベルギーは輸出インフラが整っており、欧州外への流通も比較的早い
イギリス系・スペイン系・日本系との違い
4地域のクラフトジン気質
- イギリス系: ロンドンドライの正統、ジュニパー骨太、規律重視(Beefeater, Tanqueray, Sipsmith)
- スペイン系: 地中海ハーブとジントニカ文化、香りで遊ぶ(Gin Mare)
- 日本系: 和素材と精密さ、繊細な香り(季の美、ROKU)
- ベルギー系: ジュネヴァ伝統 + 現代の自由、深みと厚み(Filliers, The Drunken Horse)
ベルギー系の特徴は、「伝統と現代の中間」に立つこと。完全な革新でも、完全な復古でもない、両方を編み込む第3の道を歩んでいる。
本記事で触れている The Drunken Horse Gin は、 日本公式オンラインショップ から購入可能です。
The Drunken Horse ― 新世代の代表例
The Drunken Horse Gin(Gentlemen's Craft 蒸留所)は、ベルギークラフトジンの「現代解釈派」を代表する銘柄。3つの要素でその系譜を体現している。
- ベルギーのジュネヴァ伝統: 銅蒸留器の正統な使い方、麦芽スピリッツの記憶
- 現代の自由: Gentlemen's Craft の独自蒸留器、12種のボタニカル、ヒマラヤ産ティムット
- 国際的な品質保証: サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトでの3大金メダル
「ベルギーから来た、伝統を持つ現代のクラフトジン」というポジションは、ロンドンドライでも和素材でもない第3の選択肢として、世界市場で確かな存在感を持ち始めている。
ベルギークラフトジンの楽しみ方
ベルギー系のジンは、以下のような飲み方で個性が引き立つ。
- マティーニ: 香りの厚みが映える定番
- ジントニック: イギリス式のシンプルさで、ボタニカルの層を確認
- ネグローニ: カンパリとベルモットの中で消えない強さを試す
- ストレート/オン・ザ・ロック: ジュネヴァに近い飲み方、ジン本来の味を楽しむ
まとめ ― ジンの故郷から、現代へ
ベルギーは ジンの故郷であり、現代のクラフトジン地図で 第4の柱を担うようになりつつある。伝統と現代を両方持つ独特の位置取りは、英国系・スペイン系・日本系のどれとも違う 第3の道として、これからの10年でさらに存在感を増すはずだ。
次にジンを選ぶ時、棚にベルギー産が並んでいたら、ぜひ手に取ってほしい。17世紀の医師の薬草研究から、21世紀のクラフトの自由までを、1本のボトルが背負っている。
ベルギー発、物語のあるクラフトジン
サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトで金メダルを獲得した
The Drunken Horse Gin を日本公式サイトからお求めいただけます。
よくある質問
Q. ベルギーのジンとイギリスのジンは何が違う?
A. ベルギーはジュネヴァ伝統を持つ「ジンの故郷」で、麦芽スピリッツや銅蒸留の長い歴史を背景に持ちます。一方イギリスは19世紀のロンドンドライ規律で発展した、ジュニパー骨太の現代スタイル。ベルギー系の方が深みと厚みがある傾向。
Q. ジュネヴァとジンの違いは?
A. ジュネヴァは17世紀ベルギー・オランダ発祥のジンの祖先。麦芽ベースで樽熟成もあり、ウィスキー寄り。現代のロンドンドライジンはクリーンな中性スピリッツがベース。同じジンの系譜でも、味の方向は別物です。
Q. ベルギーのおすすめジン銘柄は?
A. 伝統派ならFilliers、Rutte。現代解釈派ならThe Drunken Horse、Wilderen、Buss N°509。日本市場で入手しやすく国際品評会受賞歴があるのはThe Drunken Horse(サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトでの3大金メダル)です。
Q. ベルギークラフトジンの特徴は?
A. 17世紀ジュネヴァ伝統由来の銅蒸留技術と、現代の自由なボタニカル設計を両立する「第3の道」。完全な復古でも完全な革新でもない、深みと厚みのあるバランスが特徴です。
Q. なぜ最近ベルギーのジンが注目されているの?
A. (1)17世紀からの蒸留技術蓄積、(2)独立系蒸留所の多さ、(3)地理的多様性、(4)欧州輸出インフラ ― この4要素で、21世紀のクラフトジン地図で英国系・スペイン系・日本系と並ぶ第4の柱として浮上しているためです。
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