この10年で、世界のジンの風景は完全に変わった。クラフトジンと呼ばれる小規模・独自設計のジンが何百と生まれ、バーのバックバーは一気に多色になった。けれど「クラフトジンって、結局何が違うの?」と聞かれて即答できる人は少ない。本記事では、クラフトジンの定義・歴史・選び方を、ジン・ルネサンスの15年史と合わせて解きほぐす。
クラフトジンとは ― 3つの要素
「クラフトジン」という言葉に法的な定義は存在しない。ただし業界とメディアの慣用として、おおむね次の 3要素 が共通項として使われている。
- 小規模生産: 年産数千〜数万ケース規模。大手の「数百万ケース」と区別される
- 独自のボタニカル設計: ジュニパー以外に、産地・歴史・個性を反映した独自素材を組み合わせる
- 物語性: 蒸留所・蒸留家・地域の文脈が銘柄の中核にある
ロンドンドライの大手銘柄(Beefeater、Tanqueray、Gordon's など)も技術的には素晴らしいジンだが、「均質な味を大量に提供する」のが彼らの矜持。クラフトジンは逆に 「不揃いでも個性を立てる」方向に振る。
ジン・ルネサンス ― 2009年からの15年
クラフトジンのブームは、ロンドンから始まった。
ジン・ルネサンスのタイムライン
- 2009年: ロンドンで Sipsmith が、約200年ぶりに小規模蒸留所の免許を取得。クラフトジン時代の象徴的な出発点
- 2010〜2013年: 英国でクラフト蒸留所が次々誕生。Hendrick's(実は1999年から)、Monkey 47(独)、The Botanist(蘇)など独自路線が花開く
- 2014〜2018年: スペイン・ジン・トニカ文化と連動して、欧州全体に拡大。ベルギー・北欧・中欧のクラフトジンが急増
- 2017〜2020年: 日本でも本格化。季の美(京都)、ROKU(サントリー)、KOZUE など、和の素材を使ったジンが世界市場で評価される
- 2020年代: ピーク後の 淘汰と分化。安易な参入は淘汰され、独自性と品質を持つブランドが残る局面に
つまり、いま市場にある何百ものクラフトジンは、2009年から15年の進化の積み重ね。15年で世界中の蒸留家が「ボタニカルで個性を作る」競争を繰り返してきた結果が、今のバーカウンターに並んでいる。
産地で読む、クラフトジンの個性
クラフトジンを選ぶときに最も役立つ補助線が 産地だ。地域ごとにキャラクターが分かれてきている。
- 英国(イングランド・スコットランド): ロンドンドライの本場。ジュニパーの骨格を守りつつ独自ボタニカルで差別化(Sipsmith, The Botanist, Hendrick's)
- ベルギー: 元々ジュネヴァ(ジンの祖先)の本場。クラフトジン時代に再評価され、独自路線のブランドが台頭。The Drunken Horse もこの系譜
- ドイツ・北欧: 厳密な蒸留技術と多種ボタニカル設計が特徴(Monkey 47は47種を使う)
- スペイン: ジントニカ文化と連動。柑橘・ハーブ・地中海素材を活かす(Gin Mare, Larios, Mediterranean系)
- 日本: 和素材(柚子、山椒、煎茶、檜)と精密さ。世界の品評会で連続受賞中(季の美、KI NO BI、ROKU、KOZUE)
- 北米: 多様性と実験性。ニューウエスタン・ジンと呼ばれる柑橘・フローラル軸(Aviation, St. George)
分類のおさらい ― ロンドンドライ・コンテンポラリー・ジュネヴァ
「クラフトジン」と並んで頻出するもう一つの分類軸が、ジンの型(スタイル)。これは法的・伝統的な定義があり、クラフトジンとは別レイヤーの分類だ。
- ロンドンドライ・ジン: 添加なし、ジュニパー主体の伝統スタイル。クラフトでも大手でもこの定義を満たすものが多い
- コンテンポラリー(ニューウエスタン)・ジン: ジュニパーが必須なのは同じだが、他のボタニカルが主役級に立つ。21世紀のクラフトジン主流
- オールドトム・ジン: ロンドンドライ以前の甘めのスタイル。一部の銘柄が復刻
- ジュネヴァ(Genever): ベルギー・オランダ発祥のジンの祖先。麦芽由来でウィスキー寄り
「クラフトジン × ロンドンドライ」も「クラフトジン × コンテンポラリー」も両方成立する。クラフト ≒ 規模・設計思想、ロンドンドライ ≒ 製造定義、と分けて考えると整理しやすい。
本記事で触れている The Drunken Horse Gin は、 日本公式オンラインショップ から購入可能です。
なぜ値段に差があるのか
大手の量産ジンが 2,000〜3,000円、クラフトジンは 4,000〜10,000円が一般的。なぜか?
- 原料コスト: 独自ボタニカル(産地指定の希少植物、和素材など)が高い
- 蒸留所の規模: 小規模だと1本あたりの固定費が大きい
- 蒸留方式: ポットスチル / 真空蒸留 / 多重抽出など手間のかかる方式を採用
- 輸入関税: 海外クラフトジンは輸送と関税が重なる
- ブランド体験: 物語性、限定性、ボトルデザインへの投資
最初の1本の選び方 ― 3つの軸
- ボタニカルの方向で選ぶ: 柑橘・フローラル・ハーブ・スパイス・和素材 ― 自分の好みの香りはどれ?
- 飲み方で選ぶ: ジントニック中心ならジュニパー骨太、マティーニ中心なら香りの厚みがあるもの
- 蒸留所の物語で選ぶ: 訪れたい場所、応援したい作り手 ― クラフトジンは「物語を一緒に飲む」もの
The Drunken Horse ― ベルギー発、典型的クラフトジン
The Drunken Horse Gin は、ベルギー・フレムデの Gentlemen's Craft 蒸留所 で蒸留される、文字通りクラフトジンの3要素を備えた銘柄だ。
- 小規模: ベルギーの独立系蒸留所による限定生産
- 独自ボタニカル: ヨーロッパ産ジュニパーを骨格に、ヒマラヤ産 ティムットペッパー、コリアンダー、柑橘ピールなど12種を組み合わせる
- 物語性: ベルギーのジュネヴァ伝統(ジンの祖先の地)の現代解釈として位置づく
サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトの国際品評会で金メダルを獲得しているのは、ジン単体としての完成度が国際的に評価された証でもある。
まとめ ― クラフトジンは、物語を一緒に飲む
クラフトジンは 「ジンの世界を一段深く楽しむための入り口」 だ。大手の均質な完成度の上に、地域・蒸留家・ボタニカル設計という個性の階層が乗る。15年のジン・ルネサンスを経た今、選択肢は十分すぎるほどある。
最初の1本は、産地・ボタニカル・物語のどれか1軸で「これが気になる」と直感したものを選ぶのが正解。飲んで違いが分かったら、次の1本では別の軸を当ててみる。同じレシピで違うジンを試すと、ジンの世界がさらに広がる。
ベルギー発、物語のあるクラフトジン
サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトで金メダルを獲得した
The Drunken Horse Gin を日本公式サイトからお求めいただけます。
よくある質問
Q. クラフトジンと普通のジンの違いは?
A. 「小規模生産」「独自ボタニカル」「物語性」の3要素が共通項。大手の均質な大量生産ジンと違い、地域や蒸留家の個性を反映した設計が特徴です。
Q. なぜクラフトジンは値段が高いの?
A. 独自ボタニカルの原料コスト、小規模ゆえの固定費、手間のかかる蒸留方式、輸入関税、ブランド体験への投資などが積み重なるためです。
Q. 最初に飲むべきクラフトジンは?
A. 好みのボタニカル方向(柑橘/フローラル/ハーブ/スパイス/和素材)で1本選ぶのがおすすめ。ジントニック中心ならジュニパー骨太のもの、マティーニ中心なら香りの厚みがあるものが楽しめます。
Q. クラフトジンはどんな飲み方が一番美味しい?
A. 銘柄の個性が出やすいマティーニ、ジントニック、ストレート/オン・ザ・ロックがおすすめ。香り重視の銘柄は氷を多めに使い、温度を下げすぎないと立体感が出ます。
Q. ベルギー産クラフトジンの特徴は?
A. ベルギーはジンの祖先「ジュネヴァ」発祥の地。古い蒸留技術の蓄積があり、ジュニパー骨太かつボタニカルで個性を立てる路線のクラフトジンが多く生まれています。The Drunken Horse もその系譜です。
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