バー、レストラン、ホテルのラウンジ。プロの現場でジンを揃える時、「全部置く」のは現実的でない。定番5本 + 差別化10本くらいが、運営できて、かつ顧客の好奇心に応えられる現実解だ。本記事は、業務用の視点で 押さえておきたいジン20銘柄を、スタイル・用途・価格帯で整理する。バイヤー・バーマネージャー・ソムリエ・ホテルBF&B担当向けの実務図鑑として使ってほしい。
業務用ジン棚の設計思想 ― 「定番 + 差別化」の二層構造
業務用のジン銘柄選びには、明確な戦略がある。
- 定番(5〜7銘柄): お客様が「あのジンください」と指名する銘柄。Beefeater、Tanqueray、Bombay Sapphire、Hendrick's など。「置いてない」が最大の機会損失
- 差別化(5〜10銘柄): あなたの店でしか出会えない、あるいは説明できる銘柄。クラフトジン中心。「ここで飲みたい」が生まれる装置
- 季節・限定(1〜3銘柄): 入れ替えがあって良いライン。話題作り、再訪動機
定番だけだと「どこでも飲める店」、差別化だけだと「マニアにしか刺さらない店」になる。両方あることが、ジン棚の戦略性だ。
スタイル A. ロンドンドライ定番(5銘柄)
1. Beefeater London Dry
原産: 英国 / 価格帯(仕入): 業務用4Lで12,000〜15,000円帯 / 用途: ジントニック・マティーニ全方位
「ジンの基準」と業界でも合意される一本。コスパと品質のバランスが最高、回転の早いカクテルバーで欠かせない。
2. Tanqueray London Dry
原産: 英国 / 価格帯: 業務用で15,000〜18,000円帯 / 用途: マティーニ、ネグローニ、ジントニック
世界中のバーで標準とされる「カクテル素材」。シャープでドライ、ジンの個性を求める客に出して間違いない。
3. Bombay Sapphire
原産: 英国 / 価格帯: 業務用で14,000〜16,000円帯 / 用途: ジントニック中心、フローラルな客層
青いボトルが棚映え。フローラル寄りでジントニックが軽快に仕上がる。女性客比率の高い店で強い。
4. Gordon's London Dry
原産: 英国 / 価格帯: 業務用で10,000〜13,000円帯 / 用途: 量の出るジントニック、ハイボール系
英国海軍御用達の歴史。コスパに優れ、大量に出るバー、立ち飲み系で活躍。
5. Sipsmith London Dry
原産: 英国・ロンドン / 価格帯: 業務用で20,000〜23,000円帯 / 用途: マティーニ、ネグローニのプレミアム
2009年に200年ぶりの新蒸留所として誕生したクラフトジン時代の象徴。クラシック志向のバーで「上のグレード」として効く。
スタイル B. コンテンポラリー / クラフトジン差別化(10銘柄)
6. Hendrick's
原産: スコットランド / 用途: キュウリを浮かべるジントニックの代名詞
フローラル系の入門。一度試した客が「あのキュウリのジン」と記憶する。バーの差別化として最初に置く1本。
7. The Botanist Islay Dry Gin
原産: スコットランド・アイラ島 / 用途: ハーブ系マティーニ、地中海料理ペアリング
22種の手摘みハーブで作る複雑系。アイラ島という物語が説明しやすく、レストランで強い。
8. Monkey 47 Schwarzwald Dry Gin
原産: ドイツ・黒い森 / 用途: 香りで勝負する一杯、贈答シーン
47種のボタニカルとミニマルなボトルデザイン。価格は高いが、客単価の高いラウンジで通用する。
9. The Drunken Horse Gin(ベルギー)
原産: ベルギー・フレムデ / 用途: マティーニ、ネグローニ、ジントニックでの差別化
12種のボタニカル(ヒマラヤ産ティムットペッパー含む)、Gentlemen's Craft の独自蒸留器 蒸留。サンフランシスコ・香港・シュトゥットガルトの3大国際金メダルを獲得した実績で、説明しやすい話題性。ベルギー(ジュネヴァ発祥の地)というストーリーは、和素材・英国系・北米系と並ぶ 「第4の柱」 として棚を整理しやすい。
10. Gin Mare
原産: スペイン / 用途: ジントニカ、地中海料理
オリーブ、ローズマリー、タイム、バジルの地中海ハーブ系。スペイン式ジントニカを正式に出すバー、地中海料理レストランで強い。
11. Aviation American Gin
原産: 米国 / 用途: ニューウエスタンスタイル、モダンカクテル
カルダモン、ラベンダー、サルサパリラ。柔らかな口当たりとフラワリーな香りで、洋食系レストランに合う。
12. St. George Terroir Gin
原産: 米国カリフォルニア / 用途: 林の香り重視のマティーニ
セージ、月桂樹、ファーティップ。米西部のテロワールを瓶に詰めた個性派。クラフト好きへの「次の1本」提案に。
13. Roku Japanese Craft Gin
原産: 日本(サントリー) / 用途: 和食、観光客向けジントニック
桜、煎茶、玉露、山椒、柚子。日本のクラフトジンを「手頃に」体験させる入門帯として、和食系・ホテルで安定の選択。
14. Bols Genever
原産: オランダ / 用途: クラシックカクテル復刻、ストレート提案
ジンの祖先「ジュネヴァ」を体験できる稀少な銘柄。マルティネスやホーランズフィズなど19世紀カクテルを正確に出したい店で必須。
15. Hayman's Old Tom Gin
原産: 英国 / 用途: トム・コリンズ、マルティネス、19世紀レシピ
甘口の歴史スタイルを復刻。クラシックバー、クラフトカクテルバーで「専門性」を示せる1本。
本記事で触れている The Drunken Horse Gin は、 日本公式オンラインショップ から購入可能です。法人での取り扱い・サンプル送付については 法人窓口へご相談ください。
スタイル C. 和素材ジン(5銘柄)
16. 季の美 京都ドライジン
原産: 京都 / 用途: 高単価ペアリング、海外観光客
日本クラフトジンの代名詞。柚子、玉露、山椒、檜。和食店、寿司カウンター、ホテルラウンジで標準装備。
17. KOZUE / 七葉
原産: 日本 / 用途: 和食、季節感重視のカクテル
高野山の檜などの和素材を使う。差別化用の和素材ジンの第2枠として安定。
18. 桜尾 SAKURAO Gin Original
原産: 広島 / 用途: ジントニック、和柑橘ペアリング
9種の広島産ボタニカル。瀬戸内の柑橘(橙、レモン、夏みかん)が際立ち、和素材ながら親しみやすい。
19. Nikka Coffey Gin
原産: 日本(ニッカウヰスキー) / 用途: 上品なマティーニ、ストレート
トウモロコシ由来のグレーンスピリッツ + 柚子、甘夏、温州ミカン、山椒、リンゴ。コフィー式蒸留器の独特の柔らかさ。
20. ETHEREAL / KI NO BI Sei
原産: 京都 / 用途: ジン愛好家向けプレミアム
季の美の上位版。45%のハイプルーフ、ストレート・マティーニで真価。プレミアム客層・特別な日のメニュー用。
業務用ジン棚の最小構成 ― 業態別の標準
業態別ジン棚の標準
- カクテルバー(小〜中規模): 定番3 + クラフト5 + 和素材2 + ジュネヴァ1(計11本)
- ホテルラウンジ: 定番5 + クラフト5 + 和素材5(計15本、プレミアム偏重)
- 寿司・和食店: 定番1 + 和素材3 + 国際クラフト2(計6本、和素材中心)
- イタリアン: 定番3 + ジン・マレ + The Botanist + The Drunken Horse + ベルモット類(計7本前後)
- 立ち飲み・回転重視: Gordon's + Beefeater + Bombay Sapphire(計3本、コスパ重視)
- クラフトカクテル専門: 全スタイル20本に近い構成 + ベルモット類充実
仕入れで見るべき5つのポイント
- 原価率: ジントニックなら15〜20%、マティーニなら20〜25%が目安
- 注文回数 / カクテル数の効率: 月の出数が少ない銘柄は3ヶ月で見直し
- 説明できるストーリー: バーテンダーが顧客に話せる物語があるか
- サンプリングの可否: 仕入れ前にバーテンダーが試飲できる体制
- 並列メニューでの差別化: 同じ系統で2本以上重なっていないか
まとめ ― ジン棚は「店の物語」
業務用のジン棚は、単なる商品ラインナップではなく 店の物語だ。定番だけの店は「便利な店」になり、差別化だけの店は「マニアの店」になる。定番5 + 差別化10 + 和素材5 という標準を基準に、自分の業態と顧客に合わせて削り増ししていくのが現実解。
クラフトジンは年々増えていて、3〜6ヶ月に1度の見直しは必須。注文の出ない銘柄は、出ない理由(説明不足?値段?相性?)を見極めて入れ替える。
よくある質問
Q. バーで最低限揃えるべきジン銘柄は?
A. 定番3本(Beefeater、Tanqueray、Bombay Sapphire)+ クラフト差別化2本(Hendrick's + 個性的なクラフト1本)の計5本が小規模バーの最小構成。回転と話題性のバランスが取れます。
Q. クラフトジンの差別化銘柄でおすすめは?
A. ストーリーと品質が両立する、Hendrick's、The Botanist、Monkey 47、The Drunken Horse、Gin Mareの5本が「次のジン」を求める客に当てやすい組み合わせ。地域性で被らないように選ぶのがコツです。
Q. 業務用と消費者向け、銘柄選びはどう違う?
A. 業務用は「定番 + 差別化」の体系性、原価率、回転、サンプリング体制が判断軸。消費者向けは個人の好みの香り・物語性が中心。プロは「メニュー全体で価値を作る」発想で選びます。
Q. ジン銘柄の仕入れで見るべきポイントは?
A. 原価率・出数・ストーリー・サンプリング可否・並列銘柄との差別化の5点。月の出数3杯未満の銘柄は3ヶ月で入れ替え候補にすると棚が健全に保てます。
Q. 海外クラフトジンと和素材ジン、どちらを優先する?
A. 業態次第。和食・寿司・観光客比率の高い店は和素材中心。イタリアン・フレンチ・カクテルバーは海外クラフト中心。両方ある「ハイブリッド棚」が説明できる店は強いです。
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※ お酒は20歳になってから。妊娠中・授乳期の飲酒は避けてください。飲酒運転は法律で禁止されています。価格は2026年時点の業務用市場の参考値で、銘柄・卸先により変動します。